第62章 最悪の集会
「計画を聞いていないのか?」
悲鳴嶼が割り込んだ。
「宇那手は、明け方まで戦闘を引っ張ると言っていた」
「ええ?! でも、そんな事をしたら、里の被害が拡大するんじゃ⋯⋯」
「既に柱の刀と、一部の職人を空里に移したって書いてあったけど」
時透が手紙を取り出して、ヒラヒラと見せた。
「賢いね、火憐さん。情報を分散させている。手紙が他人の手に渡っても、致命傷にならない様に。⋯⋯絶対に死なせちゃいけない人だ。あの人、身体の調子はどうなの? 鬼にぐちゃぐちゃにされたんでしょう? 元に戻ったんだよね? 大丈夫なんだよね?」
「修復出来たと言っていた。だが、睡眠と食事が不足している。万全とは言えない」
冨岡は拳を握りしめた。叶う事ならば、ずっと傍にいてやりたかった。傍にいた一晩だけは、宇那手も熟睡していた。共に摂った朝食も、残さず食べていた。
「だったら、冨岡さんがなんとかしてよ!」
時透は、目をカッと開き、冨岡に詰め寄った。
「ねえ、どうして傍を離れたの? あんたにしか出来ないんだろう? 馬鹿なの? 部屋に閉じ込めてさあ、無理矢理食事を流し込んで、熟睡出来るくらい、まぐわって、疲れさせて、それから──」
「時透」
伊黒は驚き、戸惑いながら、時透を引き剥がした。
「どうした? お前⋯⋯記憶が?」
「⋯⋯なんだろう? 変な感じがする。⋯⋯ごめんなさい、冨岡さん」
時透は額に手を当てて、空を仰いだ。全身に冷や汗を掻いていた。
(駄目だ。僕がおかしい⋯⋯。こんな状態で、大丈夫なの?)
「時透、どうした? 顔色が悪いぞ」
冨岡の言葉は、彼に届かなかった。
(どうして? 僕はこんな性格だった? あんな事を口にするなんて⋯⋯。宇那手さんの意思を無視する様な事を⋯⋯。酷いなぁ。誰の真似事? ⋯⋯真似事? 誰か⋯⋯)
ドサっと音を立てて、時透はその場に倒れてしまった。