第62章 最悪の集会
──これは、私の我儘です。貴方には、幸せになって欲しい。私を好きだと言ってくださった貴方には、幸せになって欲しいんです。貴方の心を、玄弥君にも打ち明けてください。
「⋯⋯出来るわけ無いだろう」
不死川は、激しく動揺した。手紙を握り潰し、投げ棄てようとしたが、出来ずに抱え込み、後ろを向いた。誰にも涙を見られたく無かった。
「弟まで鬼狩りになって、生まれて初めて好いた女に振られて、幸せになれるかァ! なんだでだよ!! なんで、どいつもこいつも、俺の善意と愛情を踏み躙る?! クソがァ!!」
彼は、産屋敷と初めて対面した時に、拭い去られてしまった怒りを、再び取り戻した。
「あいつは死ぬ。優しく、正しい、善良な人間から死んで行くもんなァ!! ああ、クソ!! 決めらんねェ!! 玄弥か?! 宇那手か?! どっちを優先すりゃ良いんだよ!! 俺も刀鍛冶の里へ行っちゃ駄目なのか?!」
「駄目だ。既に柱三名の派遣が決まっている。これ以上は戦力を割けない」
冨岡は、苦渋の表情で答えた。
「宇那手は、上弦ノ伍、肆は、単独で討てると断言した。あいつのことだ。冷静な分析の結果だろう。他に柱が二人派遣されれば、問題ないはずだ。それよりも、胡蝶が心配だ。お館様、宇那手の次に、鬼舞辻が殺す人間を選ぶとしたら、薬の開発をしている胡蝶だ。あの屋敷は隠されているが、常に負傷した隊士や孤児がいる。あいつがこの場に来れなかったのも、それが理由だろう。宇那手は、夜間、俺に蝶屋敷の警備を指示した」
「しのぶちゃんの事は冨岡さんに任せるとして⋯⋯あの⋯⋯ちょっと心配が⋯⋯」
甘露寺は視線を逸らした。
「もし⋯⋯もし、上弦の鬼を討った後に、奇襲があったら? れ⋯⋯煉獄さんの時の様に」