第62章 最悪の集会
「黙っていた事は悪かった。俺が説明する」
冨岡は、珍しく自発的に口を開き、火憐の出自について細かく話して聞かせた。
彼女が産屋敷家の遠縁である事。彼女の能力を評価した産屋敷が、家系が途絶えた場合、彼女に跡を任せるつもりだった事。
そして、火憐が、実の叔母一家、母親からどの様な仕打ちを受けたかについて。
「だが、誤算だった。宇那手は規格外の強さを持った剣士だった。お館様は、身代わりではなく、宇那手を可能な限り生かして、戦わせる事を選んだ」
「鬼舞辻無惨はその事を知っているのか?」
比較的冷静に受け止めていた悲鳴嶼が、声を震わせて訊ねた。冨岡は小さく、首を横に振った。
「憎き産屋敷家の人間と知られていれば、とうに殺されていたはずだ。お館様ご自身、三年前までご存知なかった。そもそも鬼舞辻は、産屋敷家と血縁関係にある事すら、知らないはずだ。しかし、奴は炭治郎と同等か、それ以上の執着を宇那手に見せている。手下に任せず、自らまぐわう程に。現状、あの娘は上手く立ち回っている。即座に殺されるとは、限らない。だが、判断を誤れば⋯⋯」
「だとしたら、僕たちは此処にいるべきじゃないんじゃないかな」
時透が、瞳に強い光を宿して呟いた。
「最悪だ。僕と甘露寺さんは、火憐さんと手合わせをしていない。動きが読めないかもしれない。宇那手さんを、死なせるわけにはいかない」
「時透⋯⋯お前」
悲鳴嶼は驚いた表情を、少年に向けた。時透は胸の辺りをぐっと握りしめた。
「忘れないんだ。あの人の名前。顔も、声も思い出せる。あの人の手紙で、僕は記憶の一部を取り戻せた。宇那手さんを守る事には意味があったんだ! あの人は特別なんだ! 守らなきゃ!! 嫌だ⋯⋯あの人が殺されるのは⋯⋯絶対に──」