第62章 最悪の集会
「伊黒。非番なら手を貸してくれ」
「なんだ貴様。宇那手に逢いに行ったはずだろう」
不死川との稽古を邪魔された伊黒は、すこぶる不機嫌に答えた。
冨岡が鍛錬以外の用事で屋敷を訪ねて来たのは、これが初めてだった。
「すまない。俺一人では無理だ」
「一体どういう事だァ?! 柱の稽古よりも重大な案件か?」
不死川が代わりに前へ出た。冨岡は、何故か困った表情でそっぽを向いた。
「靴下を買いに行きたい」
「一人で行きやがれェ! 子供かァ!」
「俺のじゃない。宇那手のだ。隊服の裾が短くなり、目のやり場に困る。伊黒が以前、甘露寺に贈ったと聞いた。丈の長い靴下が欲しい」
「⋯⋯前田の野郎」
不死川は木刀を砕きそうな程強く握った。火憐はまだマシな方で、甘露寺に至っては胸まで見えている。
「宇那手の物なら仕方がない。特別に付き合ってやろう」
伊黒はすんなり納得し、木刀を置いた。
「不死川、悪いが今日は帰ってくれ」
「いや、着いて行く」
意外にも、不死川はそう申し出て、木刀を置いた。
「俺も何か贈ってやるつもりだった。これからは冷える。伊黒にアテがあるなら、行く」
「言っておくが、宇那手に手を出すな」
冨岡が釘を刺すと、不死川は青筋を立てた。
「アァ?! まだテメェのもんじゃねぇだろうがァ!! 祝言前だろう!!」
「もう、身体の関係は済ませた。昨晩もだ」
「どうせこの前みたいに、テメェが押さえつけて、無理矢理ヤったんだろうがァ!!」
「そんな事をするはず無かろう。この愚か者!! あいつが求めて来たんだ!! 意地悪く攻め立てろと」
「アイツは、柱だぞ!! 身体を壊したらどうするつもりだァ?! 一体何を──」