• テキストサイズ

【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第10章 不死川実弥


「お前は大人だ」

 冨岡は断言し、立ち上がった。それから、貧弱な言葉の引き出しから、可能な限り単語を引っ張り出した。

「俺を見て、分かっただろう。柱を信頼し過ぎるな。胡蝶や甘露寺はともかく⋯⋯皆、お前を一人前として見ている」

「あー」

 宇那手は、額に手を当てた。

「その点、他の柱は常識を弁えていると思います。いきなり、日中に抱き付いて来たりはしないかと」

 傍目には分からなかったが、冨岡はかなり動揺していた。暗に非常識だと言われた事を理解したからだ。

「それでは、師範。出掛けましょう」

 宇那手は、敢えて何も気付かない振りをして手を差し出した。

「手を握るくらいなら、子弟関係でもあり得ます」

「行くぞ」

 冨岡は、その手を取り、宇那手の前を歩いた。最早形ばかりとなってしまったが、せめて外では師範らしく宇那手を守る存在でいたかった。

 驚くべきことに、冨岡は、産屋敷邸の場所を正確に認知することが出来なかった。元々その様な仕組みになっており、これまで必ず隠が案内を務めていたため、考えたことも無かったのだが、宇那手は案内を受ける前に、一見何も無い様に思える、入口の場所で足を止めたのだ。

 冨岡は、継子が、最早自分の手に負えない状態になっている事を思い知らされた。嗅覚だけで無く、聴覚、視覚、風の流れをも可視化し、あらゆる事を察知している。

 しかし、制御が出来ていない。鍛錬を始めて、数ヶ月で全集中常中を身に付けたことが仇となり、感覚を遮断する事が出来ていないのだ。

 呼吸は、使えば使うほど寿命を縮める。元々宇那手は、特別な体質を持っているわけではない。確実に早死にするだろう。
/ 766ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp