• テキストサイズ

【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第61章 立場※


「では、人間に戻る為の試薬を打ちます。此方は、どの程度効果が見込めるか分かりませんが⋯⋯」

(これは好機。本物の鬼で試すよりも、リスクが無い。人間に害のある成分は無い。珠世さんに知らせないと)

 火憐は薬を打ち、懐中時計を取り出して、秒針を見てから、玄弥の顔を覗き込んだ。

「通常なら、どの程度の時間で元に戻りますか?」

「あの血の量なら、完全には⋯⋯四十分程度⋯⋯っ?!」

 玄弥は驚いて手を掲げた。手の爪が人間に戻りつつある。

(愈史郎さんの血で、効き始めに約十秒)

 火憐は唇を噛んだ。鬼舞辻が相手なら、十秒の間に異物として体外に排出されてしまう可能性がある。何か、不意をつかなくては。

「う⋯⋯嘘だ⋯⋯凄い!」

 玄弥は勢い良く身体を起こした。眼球も元に戻り、完全に気配が人間の物だ。

「完全に戻る迄に三十五秒です。病を治す薬としては、信じられい程優秀ですが⋯⋯。玄弥君。この薬を貴方に使った事、誰にも話さないでください。特に鬼には」

「言うわけありません! ありがとうございます!」

 頭を下げた少年に、火憐は錠剤を二種類渡した。

「緑の袋が解毒剤。空腹時に湯呑み一杯の水と一緒に飲んでください。そして、赤い方は、人間に戻る為の薬を錠剤にした物。まだ不完全な物で、効き目も緩やかですが、日光に焼かれそうになった時には、すぐに服用してください」

「はい」

 玄弥は無意識に頭を下げていた。火憐に対する悪意は、完全に払拭されていた。

「それから、これを差し上げます」

 火憐は、手紙を差し出した。随分前に実弥から送られて来た物を、切り取った物だ。

「これ⋯⋯兄ちゃんの字⋯⋯っ!!」

 ──怪我はしてねェか? ちゃんと食ってるか? 精々長生きしろや。

 其処には、玄弥が欲しかった言葉が綴られていた。

「柱の席は空いています。頑張って。君ならやれる」

「あ⋯⋯」

 玄弥は顔を上げて涙を零した。誰もが、鬼狩りなど無理だと言った。ましてや柱になる事など。
/ 766ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp