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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第60章 職人と剣士


「炎柱の煉獄さんが殉職した時、竈門君はその場に居合わせたんです。下弦の壱を葬った直後で満身創痍でした。煉獄さんは、朝日が登る直前まで交戦し、上弦の鬼に致命傷を与えた。命を賭けて、足止めし、太陽の日で焼こうとしました。ですが、鬼は恥も外聞も無く、逃走した。竈門君はそれがどうしても許せず、日輪刀で串刺しにし、逃走を阻止しようとしたんです。煉獄さんの死を無駄にしないために。鬼は、竈門君の刀に貫かれながら、日陰に逃げおおせました。⋯⋯貴方にこんな事を言ったら、怒るかもしれない。だけど、貴方もこれまで経験して来たはず。担当していた隊士が亡くなった時、どう思われましたか? 本当に、その人が弱かったのだと、そう思っていますか? 竈門君の行動は、結果から見れば無駄だったのかもしれない。だけど、無駄だと切り捨ててしまうのは、あまりに悲し過ぎる」

「刀を投げて使っただと?! 百歩譲って己の身を守るためならいざ知らず、俺の刀は何の成果も上げずに鬼に持ち去られたのか?!」

 鋼鐵塚の解釈に、火憐もとうとう頭に血が昇った。同時に、彼とは同じ価値観で物事を語れない事に気が付いた。

「次に、刃こぼれの件。彼は上弦ノ陸を相手に、刃こぼれ程度で済みました。以前、下弦を相手に刀を折っていたにも関わらず。彼は確実に強くなっています。貴方の刀と共に強くなったんです。今担当職人を変えてしまえば、やはり刀に身体が順応するまでの時間を無駄にする事になる。貴方も、竈門君の為に割いたこれまでの時間を、全て捨てる事になります。彼の為に、刀を打ってください。お願いします」

「それは、あのガキ次第だ!!」

 鋼鐵塚は茶を一気に飲み干し、湯呑みを叩きつけた。

「これまで沢山の剣士が俺を担当から外した。刀のせいで負けたのだと。折れる様な刀を作る方が悪いと!!」

 それも一理あると、火憐は思った。しかし、職人が折れる様な刀を作る方がおかしいと、自分を鼓舞するのと、剣士が侮辱するのではわけが違う。鋼鐵塚が腹を立てているのは、その辺りなのだろう。

 だが、剣士が担当を変えて欲しいと願ったのは、鋼鐵塚の人格にも問題がある。単純に面倒臭いのだ。

 戦う人間は、何時も余裕が無く、命の危険を感じているのに、打ち直しの度に包丁を持って追いかけられては、たまったものではない。
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