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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第59章 伝達


 一方、時透は、手紙に目を通し、表情を無くしていた。

「僕が生き残っても意味が無い」

 霞の呼吸は、風の呼吸の亜流に過ぎない。

(悲鳴嶼さん、不死川さん、冨岡さんを守るべき? でも、僕の方が強い)

 戦闘能力でいうなら、時透は確実に冨岡よりも優れていた。例え霞の呼吸が亜流だとしても。

(火憐さんを守るべきだ。そっちの案の方が確実。僕が日の呼吸を使えていれば⋯⋯。だって僕は)

「今、何を言おうとした?」

 時透は額を押さえて立ち止まった。何かを思い出しそうになった。

(日の呼吸⋯⋯日の呼吸⋯⋯。僕は⋯⋯ああ、そうか)

 彼は記憶のごく一部を取り戻した。その瞬間だけを鮮明に思い出したのだ。

 白樺の精の様な、産屋敷の奥方様が、何時か言った。時透は、日の呼吸の剣士の末裔だと。

(火憐さんの名前は、忘れない。不思議と覚えている。そして、僕の一部を返してくれた。やっぱりあの人を優先するべきだ)

 手紙の最後には、時透を労う言葉が綴られていた。

 ──私のせいで、大変な任務を課されてしまい、申し訳無い気持ちでいっぱいです。どうか、怪我をしないでください。まだ、貴方と手合わせをしていません。無事に戻ってください。

 ──貴方は優しい人だから、誰かを庇って怪我をしないか心配です。

(優しい? 僕が? どうして? どうして貴女の目には、優しく見えたの? だって僕は)

 最終選別の離脱者の中でも、命の優先順位を付けていた。助けを呼ばれても、最期まで戦おうとする失格者の救出を優先した。

(貴女なら、全員を助けようとするでしょう? 僕にはその余裕がない。精一杯で──)

 時透は軽い目眩を覚え、ふらついた。何かを思い出しそうだった。

「早く終わらないかな」

 時透は、随分刃こぼれした刀を見た。この仕事が終われば、刀鍛冶の里へ行く事になっている。そうすれば、火憐と直接言葉を交わせる。

 もっと、何か、取り戻せそうな気がした。
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