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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第58章 繋ぐ者


 煉獄家へ着くと、以前とは違い、槇寿郎が出迎えてくれた。精神的再建を果たしたらしく、きちんと袴を纏って、腰には刀を差していた。

「貴女が火憐宇那手だね。何度も手紙をありがとう」

「水炎柱の火憐と申します。初めまして。そして、申し訳ございません。私は当初、炎の呼吸の適性がありました。煉獄様に師事していれば、完璧に継ぐ事が出来たにも関わらず、私情により、水の呼吸を極めました」

「いや。結果として貴女は、独自の呼吸を編み出した。基本となる二つの呼吸合わせた物だ。そして、日の呼吸を使えるのだろう? お館様にも聞いたが、貴女は当代最強の柱だそうだね? そんなお方に、炎の呼吸を継いで貰えた事を、深く感謝する。ありがとう。貴女さえ構わなければ、技を見せて欲しい」

 槇寿郎は、悲し気な笑みを浮かべた。

「俺は刀を置いて久しいが、何か、少しでも力になる事が出来れば⋯⋯」

「恐縮です。煉獄さんに稽古を付けていただいた時、私はまだ未熟で、血を吐いて倒れました。あの人が最後に見た私の姿が、あんなもので⋯⋯申し訳が立ちません。胸を張って、後は任せろと言えない事が悔しくて⋯⋯」

「いや⋯⋯」

 槇寿郎は、言葉に詰まった。あの日の稽古は見ていた。火憐の技は、どれも洗練されており、威力も高かった。当時は、その光景を見て、余計に無力感に駆られた。どんなに努力をしても、やはり天才には敵わないのだ、と。

 後数ヶ月もすれば、火憐が杏寿郎を超えることは、目に見えていた。実際彼女は、鍛錬をやめなかった。話を聞く限り、上弦の鬼と関わり、手酷い目に遭って来た様だが、それでも前へ前へと進み続けたのだ。

 そして、今、彼女は非常に複雑な感情を纏っていた。怒り、憎しみ、愛、悲しみ、憐憫。どの感情も、彼女の闘志を増幅させていた。

 心だ。肉体的な強さではない。火憐は、自分の心さえも踏みつけにして、強くなったのだ。
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