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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第57章 家族の絆


「どうして⋯⋯どうして!! 守るべき人間に傷付けられる!! 私⋯⋯戦えるの? 私の命を差し出した人のために、鬼舞辻と戦えるの?! もう嫌だ!!」

「なら、俺のために戦って死ね」

 冨岡はしゃがんで火憐の肩に手を置いた。

「違う。俺のために生きてくれ。何よりもお前を優先する。お前が何と言おうと、柱であろうと、お前の命を優先する。もう二度と同じ目には遭わせない。俺も生きる努力をする。もし、死ぬ時は、置き去りにしない。だから、生きてくれ。戦わなくても良い。ただ、生きていて欲しい。頼む。死にたいなどと口にするな。俺が死にたくなる。お前を蔑ろにした奴らの為に、お前が死ぬ事など、堪えられない。せめて、俺のために⋯⋯死にたいのなら、俺のために死んでくれ。約束する。俺は決してお前を犠牲にはしない。柱の責務も全うする」

「⋯⋯あ」

 火憐は涙が零れ落ちるのを感じた。

「冨岡さん⋯⋯。貴方は、本当に優しい人です。優し過ぎて⋯⋯心配になる⋯⋯」

 彼女は堰を切った様に泣き出し、冨岡の首に縋り付いた。

「私と貴方は他人なのに⋯⋯。血の繋がりさえないのに⋯⋯」

「大抵の夫婦は他人同士だろう。⋯⋯母親については、許してやって欲しい。藤の紋の家の人間らしい選択をした。どの家も、家族の危険を考慮した上で支援をしている。お前の母親は、戦った。勇敢だった。どれほどお前が大切であろうと、数百年に亘り、祖先が守って来た物を蔑ろには出来なかった。お前と良く似ている。恨むなら鬼と、この屋敷の人間を恨め。怒り、それを原動力に生きろ」

 冨岡は火憐を抱いたまま、袖を漁った。そして、桐の箱を取り出した。

「鬼の使いから届いた。一応俺が確認したが、お前にとって少しでも救いになれば⋯⋯」

「なんでしょう」

 火憐は震える手で箱を受け取った。中身は、折り畳み式の鏡で、外面に張り合わせている布は、以前珠世に送り付けた、母の着物の切れ端だった。

「⋯⋯あの人は、本当に優しい方です。これを作らせるのに、人と接触する危険を冒して⋯⋯。今は、優しさが苦しい。もう終わりにしたいと思っている私を、繋ぎ止めている。楽になりたいのに、貴方にあんな言葉を掛けられて⋯⋯私まだ頑張ろうと思ってしまう!! 責任⋯⋯取ってくださいね」
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