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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第56章 さようなら


「確かに、妙な気配だったな」

 宇髄も眉間に皺を寄せた。

「今のお前くらい、人間味が無かった。そもそも大好きなお前の目の前で、師範が嫌われているのは本当か、なんて訊いて来たからな。最初は面白いヤツかと思ったが、嫌味じゃねえ事はすぐに分かった。なんというか⋯⋯心の大事な何処かが無い様に感じた。今も傷付いてるんだろうが、そもそも傷付く心が欠落していた様な気がする」

「冨岡さんは、宇那手ちゃんに、心をあげたんですね」

 甘露寺はまだ蕩然としていた。そんな彼女を見て、冨岡は気が付いた。

「宇那手とお前は、良く似ている。俺があいつに育手を紹介しなかったのは、俺が居場所を与えなくとも、生きて行ける女だと判断したからだ。確認したが、母方の藤の紋の当主も、あの娘を引き取る意思があった。だが、あいつは勝手に死んだ隊士の刀を奪い、鬼殺隊に入隊した。止めても、止めても、無茶を止めない。己を燃やす様に生きている。己を焼き尽くす勢いで生きる事が、宇那手の心からの願いなのだろう。俺だけじゃない。俺や隊士、お館様を守る為に身を削る、あの姿が、本来の姿なのだろう。だから今は心が見える。以前は心を殺していたんだろう」

「だとしたら、救われねえな」

 宇髄は膝を立てて、視線を逸らした。

「甘露時も火憐も、鬼がいなくなったら、カタギに戻れるのか? 二人共自分を偽れるが、幸せにはなれねえ。⋯⋯柱は、誰一人死なせるわけにはいかない。特に冨岡と伊黒。他の柱を支えている柱が倒れれば、例え鬼舞辻を殺せても救いがねえ」

「嫌だ、止めてよ!」

 甘露時は最悪の未来を想像して震えた。

「もう誰も死なない! 嫌!」
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