• テキストサイズ

【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第55章 心の蓋


「止めてくださいね。火憐さんの願いを叶えてあげてください。冨岡さんの子供が欲しいって⋯⋯火憐さんが言ったんですか?」

 胡蝶はほんの少し微笑んだ。対して冨岡は俯いて表情を隠した。

「こいつは何時も人の事ばかり考えている。自分が先に死ぬから、俺を一人しない様にと⋯⋯」

「素敵⋯⋯」

 甘露寺は胸をときめかせた。

「私、応援します。人の恋路を邪魔する奴は許さないんだから! 絶対に、その意地悪な鬼の首を斬ります」

「何と言うべきか⋯⋯」

 悲鳴嶼は、必死に言葉を探したが、何も思い浮かばなかった。

 冨岡は溜息を吐いた。

「こいつに恐怖心が残っていて良かったと言うべきだろうか。もう二度と、あんな真似はさせたくない」

「心が死んでいなくて、良かったんですよ。⋯⋯私はあまね様に報告をして参ります。皆さん、出来れば傍にいて差し上げてください。言葉通り朝まで。きっと安心すると思いますから」

 胡蝶は疲れた様子で部屋を後にした。縁側では、火憐の弟子が口を押さえて蹲っており、介助を受けていた。

(姉さん⋯⋯どうして不幸は、津波の様に、一人の人間を飲み込むのでしょうか? どうして苦しみを、等分に分かち合う事が出来ないのでしょうか?)

 誰も、火憐に同情、共感出来る人間がいなかった。世界中探し回っても、あれだけ悲惨な目に遭わされた人間はいないだろう。しかし、寄り添う事を諦めてしまえば、彼女は確実に壊れてしまう。

 柱の面々が、もっと強くなる必要があった。
/ 766ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp