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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第54章 仮初の光


「ごめんなさい! 私⋯⋯私が弱いから⋯⋯」

「違うよ、宇那手。違うんだ。そうやって自分を責めないでくれ。弱いのは私だ。君が守ってくれなければ、私はあの隊士に殺されていた。こうして、もう一度家族の顔を見る事も叶わなかった。誰にも、君を責めさせはしない。それが、私に出来る最低限の事だと思っている。顔を上げて。もう一度私に、顔を見せておくれ」

 火憐は顔を上げ、真っ直ぐ産屋敷を見詰めた。そして微笑んだ。記憶に残る最後の表情が笑顔であって欲しかったから。

「許します。⋯⋯私は最初からそのつもりでした。どんな存在にでも、許しを与えられる⋯⋯そんな自分が誇りでもあるんです」

 彼女は穏やかに告げ、産屋敷の家族達を見回した。

「もう、心残りはありませんか? これ以上は身体が冷えます。星も、月も、愛しい家族の姿も、後悔の無い様に、目に焼き付けてください」

「後悔など、あるものか⋯⋯。こんな僥倖は期待すらしていなかった。ありがとう宇那手。皆、私の側に来て欲しい」

 産屋敷の願いを聞き入れ、子供達も、柱も彼を取り囲む様に集まった。

「守ってあげられなくてごめんね。私は幸せだ。可愛い子供達⋯⋯そして、最強の柱⋯⋯。後悔は無いよ。本当に⋯⋯幸せだ」

「⋯⋯では」

 火憐は、産屋敷と悲鳴嶼の額から札を剥がした。夢の時間が終わり、二人は暗闇に連れ戻された。

「宇那手!」

 冨岡は手を伸ばして、倒れ掛けた彼女を支えた。限界を迎えていたのは、彼女もまた同じだった。

「冨岡さん、そのままで。⋯⋯お館様、例の物は手に入りましたでしょうか?」

「ああ」

「では、私と一緒に、明日運んでください。胡蝶さんは、羅馬字を読めるのですよね?」

「ええ、一通り。英語も少しは」

「これから、新しい処方を考え次第、タイプライターを使用し、羅馬字表記の物を送ります。機械で書いた物を、誰かが書き換えれば一目瞭然です。薬を直接送れば、中身をすり換えられる危険もありますので。私は⋯⋯そろそろ眠りたいです」
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