第53章 真の目的
「貴女の言葉にも、かなり毒がありますね。まあ、受けた仕打ちを考慮すれば、足りないくらいですが」
胡蝶は火憐の手を引き、歩きながらため息を吐いた。
「貴女の事を心配して、宇髄さんや、悲鳴嶼さんも来ています。それから、鴉に伝言を預かりました。札を猫の額に貼れ、と」
「宇髄さんは大丈夫なんですか?! かなり失血しましたし、毒も⋯⋯」
「貴女は、本当に人の事ばかり。まだ鬼に対して哀れみも持っている。何時か⋯⋯何時か姉さんの様にならないか⋯⋯私は不安で⋯⋯」
「だって、今回私を刺したのは人間で、幾つもの薬を送ってくれたのは、鬼ですから。それに、皆さんが集まってくださって良かった。多分、これが最後の機会になるので」
火憐は胸に手を当てて微笑んだ。空を見上げると、星が煌めいている。そして、満月だ。
「素敵な夜になりそうですね」
火憐は、血に塗れた手を空に翳した。