第9章 「愛している」
「もう一つ疑問があります」
宇那手は、鬼殺隊隊士の顔付きで、冨岡を見据えた。
「あの屋敷は、あまりにも警備が手薄です。鬼舞辻は、確実に、お館様の所在を突き止めようとしているはず。⋯⋯産屋敷様の家系は、呪われており、代々短命と聞きました。嫌な予感がします。もしや、お館様はご自身を餌に、鬼舞辻を呼び寄せているのでは?」
「お館様の意向に、俺たちは指図出来る立場では無い。しかし、良く見破った」
冨岡は、今度こそ、自分の強い意志で、宇那手を抱きしめた。家族以上の親愛を込めて。
「火憐。良く堪えた。そして守った。⋯⋯何故、俺に話せなかった?」
「鬼舞辻は、十二鬼月とは比べ物にならないくらい強いです。気配で分かりました。恐らく柱が束で掛かっても、勝てるかどうか⋯⋯。師範だけを危険に晒し、死なせたく無かったのです! 申し訳──」
宇那手は、何が起きたのか分からなかった。ただ、頬を両手で包まれ、唇を何かで塞がれていると認識した。
冨岡は、宇那手の腰に腕を回し、自分の方へ抱き寄せた。何故、突然そうしたくなったのかは、分からなかった。
出会った時、宇那手はまだ十五の子供だった。しかし、いつの間にか、他の柱にも劣らぬ、立派な剣士となっていた。本来なら、冨岡の庇護も助けも必要としない戦力で、死んでしまっても、仕方が無いと言い捨てられる一人前だ。
それでも傍に置き、家族ごっこに興じた。しかし、冨岡は、母のことをあまり覚えてはいなかったし、強過ぎる宇那手を妹ととも思えなかった。姉の代理にもなり得ない。だとすると、彼女の役割は⋯⋯