第53章 真の目的
「そこまで考えて⋯⋯」
浅井は、ガタガタと震えながら溢した。火憐は、微笑み、なんと自力で立ち上がって見せた。
「お風呂くらいは、さっさと沸かせと言っても、バチは当たりませんよね? 全身血塗れで気持ちが悪いです」
「当然です! 分かっているとは思いますが、湯船には浸からないでくださいね。万が一毒が残っていた場合、全身に巡ってしまう」
胡蝶は、怒りを隠しきれずに返すと、素早くその場を去った。火憐は、弟子たちを見回した。
「以上です。今この時を以って、自由にしていただいて構いません。ですが⋯⋯ですが、もし、まだ私から学ぶ物があると考えている方がいれば──」
全員がその場に膝を着いて、頭を下げた。
「貴女の側に置いてください」
桜里が、代表して口を開いた。
「私は貴女に恩があります。必ずお返しします!!」
「⋯⋯ありがとう」
火憐は穏やかに答えた。
「ですが、私は当面身を隠す様に言われています。鬼舞辻本人が、私を追っている。加えて、数ヶ月後には、上弦の鬼との戦いを控えている。全員を連れては行けない。譲歩しても、桜里さん、村田さんまで。後の者達は、連れて行けば、確実に死なせてしまう」
「俺は残ります」
村田は迷わず答えた。
「残って、自分に出来る事をします。上弦の鬼を殺せなくても、異能の鬼を可能な限り斬ります」
「私は着いて行きます!」
桜里は額に薄ら汗を浮かべながら宣言した。彼女は触覚を可能な限り研ぎ澄ませた結果、火憐の身体が毒と傷に塗れた、とんでもない状態にある事を見抜いてしまった。
「勿論、全集中常中も身に付けます! 技も磨きます!! ですが、貴女を布団に縛り付け、世話をする人間が必要です。私が貴女を死なせない!!」