第53章 真の目的
「はい!!」
弟子たちは一切に返事をした。火憐はもう一度血を吐き、言葉を続ける。
「私は鬼の医者とも接触しました。さっきお話しした方です。子供の成長を見守る為に、鬼になる事を望み、結果子供を食い殺してしまった。その方は、鬼になれば自我を失くす事を知らされずにいた。鬼舞辻の抹殺を願っており、血の呪いも解除しています。産屋敷家にも認知されており、何百年も前から、討伐対象から外されています。四百年間、人を喰わずに生きています。先程の猫は、その使いです。恐らく、私に使用された毒を調べてくださっているはず」
「鬼が人間と手を組んでいるのですか?」
浅井は目を見開いた。彼だけでは無い。他の隊士もだ。火憐は頷いた。
「鬼の医者⋯⋯珠世様は、鬼舞辻を殺す為の毒の開発、及び鬼を人間に戻す治療薬の開発をしています。⋯⋯皆様にも、あの善良な医者の存在を認めて欲しいのです。人を害した事を心から悔いており、力を貸してくださる⋯⋯。あの方は孤独でした。鬼狩りからも、鬼舞辻からも身を隠し、何百年も生きて来た⋯⋯。他の鬼とは気配が異なります。鍛錬を積んだ皆様なら分かるはず。もし、任務の最中に接触があれば、嫌悪しないでいただきたいのです」
「分かりました! 火憐様、お話をしていて苦しくは無いのでしょうか?」
桜里はまだボロボロ泣いていた。火憐は頷いた。
「元々耐性がありますので。それに、以前これよりも酷い屈辱を味わいましたから」
「宇那手」
冨岡が、薬袋と、すり鉢、湯呑みに入った水まで用意して戻って来た。
「ありがとうございます、冨岡さん」
「どうすれば良い?」
「⋯⋯今、組み立てますので、お待ち下さい」
火憐はしばらく目を閉じ、一つ頷いて目を開けた。
「私の言う通り、正確に調合をお願いします。桜里さん、私の言葉を書き取ってください」
「はい!」
桜里は綴じ本と万年筆を受け取った。