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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第53章 真の目的


「わ⋯⋯私も⋯⋯私も納得出来ません!!」

 甘露時も抗議の声を上げた。温和な彼女が大声を上げるのは珍しい。

「こんなやり方、酷いです!! 誰も救われない⋯⋯。ただ、傷付けられて⋯⋯うう」

 彼女は泣き出してしまった。冨岡は、まだ感情の収まりがつかず、遂にはあまねに掴みかかっていた。

「貴女は知っていたのか?! 火憐の弟子の中に裏切り者がいる事を!! 最初から知っていて──」

「知らない⋯⋯知らないはずです⋯⋯」

 火憐が冨岡の隊服を掴んでいた。刺し傷よりも、毒の影響で、彼女は弱っていた。

「あまね様を責めないで⋯⋯。知っていたのは、お館様と私だけ⋯⋯。私の提案です」

「何でかな⋯⋯」

 村田は悔しそうな表情で、膝を着いた。倒れている火憐を抱き起こして、大粒の涙を溢した。

「どうしてこんなに優しい人が、犠牲になるんだよ⋯⋯。なんでだよ⋯⋯」

「自分の案は、自分で。他の誰かに背負わす事は出来ません。それに、この方は、私のせいで鬼に揺さぶられた様なものです。私と出会わなければ──」

「あんな卑怯者の言葉、真に受ける必要はありません!!」

 桜里は泣きながら、火憐に寄り添った。

「弱さの理由を、他人のせいにしただけの馬鹿です!! 死ぬなら一人で絶望して死ねば良かったのに!! 貴女を巻き込むなんて、恥知らずだ!!!」

「それでも⋯⋯この方は最期に選びました。鬼に与するより、死んだ方がマシだと。良かった⋯⋯」

「良くないです!! 全然良くないですよ!! どうして避けなかったんですか!!」

 浅井はみっともなく泣き崩れた。

「貴女は避けられたはずです!!」

「一人で死ぬのは⋯⋯怖いですから。せめて、夢くらいは見せてあげたかった⋯⋯。私は、この隊士の願いを、何一つ叶えてあげられなかった⋯⋯から⋯⋯」

 火憐は今にも息を引き取りそうなくらい、弱々しく返答した。そして、慌てて笑みを浮かべた。

「心配しないでください。疲れているだけです。私の体は毒で性質が代わり、それを薬で無理矢理元に戻した。細胞が二回、変化しているんです。酷い風邪が、一分で治った物と思ってください。体力を消耗しただけですので⋯⋯」
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