第53章 真の目的
火憐は、さらに刀を喰い込ませた。
「鬼になりたいのなら、私が仲介します。鬼舞辻の血を分けられる鬼を知っている。そこまで貴方をお連れし、貴方とその鬼の首を撥ねてから、私も死にます。若しくは貴方を破門します。今日中に此処から放り出し、鬼殺隊から除名した上で、保護、監視の対象とします。今決めてください!!」
佐伯は、刀を取り落として膝から崩れ落ちた。
「駄目だ! こんな奴、野放しにしたらいけない!! お⋯⋯俺が斬ります!!」
浅井が刀を構えた。
「やめろ! 柱の命令に従え!」
村田が彼を抑え込んだ。
「なんでよ⋯⋯。なんでこんな事に⋯⋯」
女性の一人はガタガタと震えていた。火憐は膝を着き佐伯と向き合った。
「貴方はそもそも、何故鬼殺隊に入隊したのですか?」
「鬼に⋯⋯家族を殺された」
「家族を殺した鬼になりたいのですか? 別の誰かの幸せを壊したいのですか? 鬼が理性を取り戻すには、多くの血肉を喰う必要があります」
「俺は⋯⋯きっと殺される。鬼にならなければ⋯⋯。並の隊士が守れるものか! 俺が会った鬼は、生半可な奴じゃなかった! 嗚呼⋯⋯あんたなんかに出会わなければ良かったよ!! 強くなりたいなんて⋯⋯誰かを守りたいなんて思わなければ!!」
火憐は、視界の端に光が走るのを感じた。避けようと思えば避けられた。鬼の攻撃なら避けただろう。しかし、人間に対しては情があり、判断が鈍った。
「宇那手ちゃん!!」
甘露時の悲鳴と同時に、火憐は首から血を流して倒れていた。短刀で刺されたのだ。
「甘露時! そいつを取り押さえろ!! 俺は胡蝶を──」
冨岡の制止も虚しく、佐伯は自分の心臓に短刀を刺していた。
「ごめ⋯⋯なさい⋯⋯」
彼は一言残し、あっという間に事切れてしまった。