第53章 真の目的
「やはり、現状貴方が一番成長していますね。私の見込みでは、伸び代があるのは、佐伯さんと桜里さんだと思っていたのですが」
その言葉を聞き、二人はギクリと肩を揺らした。少し迷って、桜里の方は言葉と一緒に涙を溢した。
「分からないんです!! 身体の使い方が分からなくて⋯⋯。これ以上動作を速めれば、関節が外れてしまいます!! 余力があるのに、技の威力が上がらない!! もう、どうして良いのか⋯⋯」
「こちらの刀を握って」
火憐は、また新品の刀を手渡した。桜里が強く握ると、刀身は白色に変わった。これまで使っていた刀は、修行を積む前の物であり、色がハッキリしておらず、適性が分からなかったのだ。
「水の呼吸が身体に合っていないのです。霞の呼吸の適性がある様です。時透さんに鍛錬を依頼するのは難しいので、派生源の風の呼吸の剣士に、動きの修正を依頼しましょう」
火憐の言葉に、桜里はギクリと全身を震わせた。
「か⋯⋯風の呼吸ですか? つまり⋯⋯」
「実弥さんは、口が悪いだけで、優しい方です。心配いりません。恐らく、力を限界まで引き出せれば、貴女が一番強くなれるはず。⋯⋯私もそうなのですが、技の威力を上げれば、自然と刀身に負荷が掛かり、反動で関節が外れる心配は無くなります。後は純粋にもう少し筋肉を鍛えましょう。刀を打ち直して貰った方が良いですね。私や胡蝶さんの例を踏まえて、敢えて軽く作られている様ですが、貴女なら、もう少し重くても堪えられるはず。今は、刀を使った鍛錬よりも、握力や筋力の強化をお願いします」
それから、火憐は佐伯に目を向けた。
「貴方は手を抜いていますね。何のために私の所に来たのですか? 技術を研鑽するためでは無いのですか?」
「⋯⋯あんた、覚えて無いのか」
佐伯の言葉に全員が動きを止めた。柱を「あんた」呼ばわりするなど、あってはならない事だ。火憐は、その点について咎めず、記憶を辿った。
「以前⋯⋯お会いしていたのでしょうか? 複数の隊士と協力して挑んだのは⋯⋯」