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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第51章 If〜もし主人公を助けたのが、不死川だったら


(イカれてやがる⋯⋯)

 不死川は、嫌な汗をかいた。火憐の纏っている雰囲気は、時透と良く似ている。

「俺の質問に答えろ」

「はい」

「俺が死んでテメェが生き残ったとする。逃げろと言ったら逃げるか?」

「貴方の遺体⋯⋯血を活かして勝てる様でしたら、最後まで戦います」

(コイツ、俺の戦い方を覚えたのか)

「次。俺がテメェを置いて逃げたらどうする」

「何か事情が無ければ、その様な事はしないはず。可能な限り鬼を足止めします」

「次。もし──」

「鬼です」

 火憐は、これまでの執着を捨て去り、走り出していた。一瞬遅れて不死川も気配を察知した。

「おい、テメェ! 条件だ!」

「なんでしょう」

「風の呼吸でこの鬼の首を斬れ!」

「承知」

 火憐は強く地面を蹴った。そして、折れた刀を手にした隊士と向き合っている鬼に、刃を振るう。

「玖ノ型、韋駄天台風」

(嘘だろおい⋯⋯)

 不死川は言葉を失っていた。火憐は、風の呼吸の中でも最も高威力の技を使用したのだ。

 彼女は音もなく着地し、倒れていた隊士に手を貸した。そして、優しい笑みを浮かべた。

「大丈夫ですか?」

「はい! 助けていただいて、ありがとうございます!」

「怪我はありませんか? ⋯⋯腕を切られていますね。止血します」

 火憐は、羽織から包帯を取り出し、処置をした。

「このまま南へ降りれば、最短距離で街へ戻れます。御武運を」

 彼女はそう言ってから、不死川に顔を向けた。そして、月の様に穏やかな笑みを浮かべた。

「そういえば、貴方も怪我をしていましたね。見せてください」

「っ⋯⋯俺のは何時もの事だ」

「尚更酷い。⋯⋯私は貴方の継子になりたいですが、風柱になりたいわけではありませんので、手首を切ったりしないでくださいね」

 勝手に手当てを開始した火憐からは、心地良い香りがした。如何にも女らしい、花の様な香りだ。

 少し前、不死川に、怪我を増やさないでくれと言った花柱が殺された。

「嗚呼⋯⋯クソ」

 だから女は嫌なんだ、と不死川は心中でボヤいた。火憐は、継子に相応わしい能力を持っており、無碍に追い払える存在では無かった。
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