第51章 If〜もし主人公を助けたのが、不死川だったら
「テメェ、名前は」
「火憐宇那手と申します」
「そうか、火憐。悪いが俺は継子を取らない。俺の戦法は人に教えられるもんじゃねェ! だから無意味だ!」
「教えていただく必要はありません」
火憐は想定外の返答をした。
「教えていただかなくても、強いので」
「テメェふざけてんのかァ?! それなら何のために継子になる?!」
「実績を早く積み過ぎたせいで、私の階級は放置されています。討伐数を考慮すれば、甲に該当すると考えています。十二鬼月を二体斬りましたし──」
「アレもテメェの仕業かァ!!」
不死川は額に手を当てた。丁度一年前に、やはり階級不明の女が突如現れ、涼しい顔で十二鬼月を倒し、去って行ったと聞いた。
火憐は頷き、言葉を続ける。
「継子になれば、改めて私の実績が評価されます。現状、柱の席は満席ですが、予備がいても悪くは無いのでは?」
「あのなァ⋯⋯」
不死川は遂に根を上げた。
「分かった。少し話をするぞ」
彼は元々理論的に話す事を苦手としていたが、必死に頭を回転させた。
「普通は呼吸の適性が合ってるヤツの元へ行くんだ。水の呼吸の使い手は多いが、炎柱は継子を欲しがっている。悪いこったァ言わねェから、そっちへ行け」
「⋯⋯意図した事が伝わっていない様ですね」
火憐は、首を傾げた。
「私は、害獣を取り逃した貴方に、後始末をつける様にお願いしているのです。殺すか、飼うか、決めていただきたいのです」
「テメェ⋯⋯」
「この二年間、私は地獄の様な時を過ごしました」
火憐は胸に手を当てて、初めて苦しげな表情を浮かべた。
「私の家族を鬼にしたのは、鬼舞辻無惨です。私が殺したい鬼は、鬼舞辻一匹です。でも、振られる仕事は、雑魚狩りばかり。鬼殺隊は、一体何時になったら私を鬼舞辻と戦わせてくれるのですか? 私は鬼舞辻を殺すための刀です。もし使えないというのなら、早々に折っていただきたい。貴方が後始末をしてください」