第49章 医術※
「何を考えているんですか!」
火憐は二人きりになった瞬間、説教を始めた。
「隊士ならともかく、一般人に怪我を負わせるなんて! 守るべき存在を害してどうするんですか! 何故手が出るんですか!」
「すまない。反射的に動いていた」
「全く⋯⋯」
宿に入った時とは立場が入れ替わり、火憐は、怒りながら文机に向かった。
「冨岡さん、横に来てください。情報共有をします」
彼女は愈史郎に貰った札を額に貼り付け、万年筆と綴じ本を取り出した。
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上弦の十二鬼月は、現在五体。
玉壺の急所は壺。
半天狗は、幾つかの姿を持っており、最小の個体が本体。首が急所。
猗窩座は、人間に近い姿。急所は首。何らかの理由により、女を喰えない。それ故に数字は参。恐らく私個人が太刀打ち出来るのは、此処まで。
童磨。万世極楽教の教祖。人に紛れて生活をしている。感情が無い。氷の血鬼術を使用。冷気を吸い込めば、肺が壊死するため、呼吸を使用する剣士が倒す事は困難。鬼舞辻にも嫌悪されている。女を好んで食す。元花柱を惨殺。炎柱の殉職が悔やまれる。
黒死牟。恐らく、痣者の元鬼殺隊士。鬼に与した最古の痣者を此方で探る。鬼舞辻の信頼も厚い。実力が測れなかった。恐らく呼吸を使用出来る。
鬼舞辻の根城。産屋敷邸と同程度の目眩しを施している。琵琶を弾く女の鬼が、空間を制御。仕組みとしては、炭次郎が討った響凱の鼓邸と同じ様な物。此処で戦う場合、戦力の分断が想定されるため、視覚の共有が大きな鍵となるだろう。琵琶の鬼を討つ事で、隊士の分断を避けられるはず。
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火憐は、書き終えてから数秒待ち、頁を破り取って火鉢に放り込んだ。同時に、額の紙も崩れて消えた。
彼女は、深呼吸し、真後ろに寝転んだ。
「どうです? 中々でしょう?」