第49章 医術※
冨岡は、そこそこの大金を叩いて、一時間程宿の大浴場を貸切にした。火憐が払うと何度も言ったが、彼は譲らなかった。
それどころか、冨岡は、宿へ行く道すがら、火憐に袴を一式買い与えた。
火憐は、脱衣所で腕の包帯を外し、傷口を見た。さっき作ったばかりの二箇所も、既に塞がっている。切り傷に関しては、白く痕が残ってしまったが、仕方が無い。
「どうした? 痛むのか?」
腰にタオルを巻いた状態で冨岡が覗き込んだので、火憐はギクリと飛び上がってしまった。
「いえ。様子を見ていただけです」
「そうか。さっさと脱いで入って来い」
彼はそう言うと、先に浴場へ行ってしまった。
(怒り⋯⋯? 違う⋯⋯もっと複雑な感情⋯⋯。悲しんでいる⋯⋯)
火憐は、泣き出しそうになってしまった。自分の行動が、冨岡を苦しめていると分かったから。
彼女は急いで羽織と隊服を脱ぐと、冨岡の後を追った。
「座れ」
冨岡は、自身の前に置いた風呂椅子に火憐を座らせた。背後から抱く様に湯を掛け、顔をしかめた。
「嫌な気配と臭いがする。辛かっただろう」
「怒らないんですか?」
「怒っているが、怒れる立場では無い。お前は事前に連絡を寄越したし、それなりの物を得て来たのだろう。それに、お前の初めては俺が貰った。俺の物である事に変わりは無い」
「怒っていますよね? ごめんなさい! 私を気遣って──」
「それが分かっているなら、もう黙っていろ」
冨岡は火憐の胸の頂きを摘み、彼女の体を解した。鬼に蹂躙されてから、そこそこ時間が経っており、入口は乾いている。指を無理矢理押し込めば、傷が出来るだろう。