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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第48章 心の炎※


「ありがとうございます。お礼をしなければ」

 火憐は袖から採血キットを取り出し、自分の左腕に躊躇いなく突き刺した。二本を限界まで血で満たし、愈史郎に差し出した。

「私は稀血の様です。調べていただいても、飲んでいただいても構いません。私で良ければ、定期的に血液をお渡しします」

「助かるが、それを使うのは止めろ! 傷が残るだろう!」

 愈史郎は注射器と針を纏めて火憐に渡した。口調は乱暴だが、愈史郎は本当に心の優しい鬼だと、火憐は思った。

「今晩、貴方に会えて、救われました。人の言葉に傷付けられた時、人の言葉でしか救われない様に、鬼に傷付けられた私の心は、やはり鬼にしか救えなかった。私は身を切る思いで奴らの情報を掴んだ事が、無駄では無かったと思えました。ありがとう。貴方の様な人を救う為なら、私の行動には価値がある」

 邪気の無い火憐の言葉に、愈史郎は苦しげな表情を浮かべた。

「⋯⋯俺は鬼になって、二十年程度だ。まだ、人間の痛みや苦しみが分かる。お前がどれだけ酷い目に遭ったのか、理解出来る。辛かっただろう。すごいよ。⋯⋯酷いよな、アイツらは。何処までも残酷で、酷い事をする。でも、頑張ってくれよ。珠世様の為にも。これでも、柱は尊敬しているんだ。俺よりも遥かに強いからな」

 彼は少し躊躇ってから、火憐の頭を撫でた。

「死ぬなよ! 絶対に死ぬな!! 生き延びて、これまでの理不尽を全て精算しろ!! じゃあな!」

 愈史郎は、その場でスッと姿を消してしまった。火憐は、彼の言葉を噛みしめ、冨岡に抱きついた。

「⋯⋯冨岡さん」

「なんだ」

「私の身体、綺麗にしてください。また汚れてしまったので。全部⋯⋯全部身体の外に出してください!!」

「分かった。風呂のある宿を探す」

 冨岡は、火憐の腰に手を回して、支える様にして歩き出した。
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