第47章 上弦集結
(女を喰うことに抵抗がある?)
火憐は、少しの隙も見逃さなかった。猗窩座は、最早何も告げずに立ち去ってしまった。
黒死牟は火憐に全ての目を向けた。
「お前は⋯⋯痣が発現している。奇しくも私と近い場所⋯⋯。日の呼吸の使い手。お前が一番強いのだろう。だが、あいつには及ばない。早く鬼になれ。そして、一人でも多く喰らい力を付けろ」
「貴方は、日の呼吸を使えなかったのですね。言葉から察するに、呼吸について知識をお持ちの様子。元鬼殺隊士でしょうか?」
黒死牟は口を噤んだ。何か喋れば喋るだけ、聡い女は情報を引き摺り出してしまう。火憐は、童磨に似た笑みを浮かべた。
「痣が原因で鬼になったのでしょうか? そして、日の呼吸を使用できなかった劣等感がある。日の呼吸の使い手が、一番強いのですね? では、私は習得して見せましょう」
黒死牟は、危機感を覚え、無言で立ち去ってしまった。玉壺と半天狗は、二体同じ場所へ飛ばされる事を願い、琵琶の女の術で姿を消した。
童磨は性懲りも無く、火憐の頭に手を置いた。
「あの黒死牟殿を言い負かすとは、中々見込みがあるね。ねえ、俺と一つにならない? そうすれば、数字は同じ弐だよ? 嗚呼⋯⋯君のその華奢な身体を抱きしめて──」
「失せろ」
苛々とした鬼舞辻の声が頭上から響いた。琵琶が鳴り響き、童磨は強制的に元いた場所へ戻された。
火憐は、再び鬼舞辻の隣にいた。
「他に、何かご用でしょうか?」
「お前の子供は?」
「は?」
「子供はいないのか?」
「おりません。ずっと戦っておりますので、産む余裕もありませんでした」
「では、お前の身体を貸せ。二十以上の、一度でも子を生んだ女の身体には、何の感情も抱けなかった」
「嫌です。代わりに此方をお渡ししますので」
火憐はカカオを机に置き、距離を取った。しかし、鬼舞辻は机を回り込み、彼女の腕を掴んだ。
「一度試しに抱かせろ。代わりに水柱は殺さずに見逃してやる」
それは、火憐が、決して断ることの出来ない条件だった。