第47章 上弦集結
「腕力では岩柱。総合的に可能性のある者は、霞柱でしょうか。岩柱とは手合わせしましたが、技の威力、機動力共に、私の方が上回っていました。もう一方は、日の呼吸の剣士の末裔であり、天才と聞いています。残念ながら、まだ手合わせをしていません」
「そうか」
鬼舞辻が答えると、琵琶が鳴り響き、火憐は、広い空間に落とされていた。腹の立つことに、童磨と二人きりにされ、残りの上限達は上階に飛ばされて、下を覗き込んでいた。
「童磨。鬼の威厳を見せてみろ。但し殺すな。その女はまだ使える」
鬼舞辻の命を聞き、童磨は嫌な笑みを浮かべた。
「へえ⋯⋯。そっか、そっか。戦う事が君の望みなんだ。それなら、叶えてあげよう」
童磨は扇を一振りした。すぐに気配を察知した火憐は呼吸を止め、間合いを取った。
(殺す気満々じゃないの!!)
火憐は、久し振りに冷や汗をかいた。もし、呼吸を用いた技で防ごうとしていたら、冷気を吸い込み、肺が壊死していただろう。
「水炎の呼吸、拾弐ノ型、流炎舞、反転」
「うわあ! 凄い威力だ!」
童磨は、自身の体から焼け爛れるのも厭わず、笑った。火憐は、彼が次の血鬼術を使用する前に対策を練った。
(水炎の呼吸、拾壱ノ型、流炎舞)
これで、間合いに近付いたとしても、攻撃を振り払える。
童磨の血鬼術の性質が氷で助かった。
「日の呼吸、壱ノ型、円舞」
先日動きを見て覚えた、全ての呼吸の始まりの技。最も高威力の攻撃を加えた。火憐の刀は童磨の首を半分斬ったが、彼は何と素手で日輪刀を掴んで振り払った。
「これは、これは! 是非とも鬼となって、戦って欲しい!!」
童磨は扇子を振った。
「蓮葉氷」
蓮の花の形をした氷が、火憐の技を僅かに掻い潜り、右手を掠った。彼女は少しも迷わず、氷掛けた右手から、左手に刀を持ち替えて振りかぶった。
「炎の呼吸、肆ノ型、盛炎のうねり!」
「なんで?! なんで威力が落ちないの?!」
「水炎の呼吸、参ノ型、炎虎大滝舞!!」
火憐は無視して技を叩き込んだ。水の様にしなやかな動きで、炎の刃が童磨の全身を切り刻んだ。
「もう良い」
鬼舞辻の制止が入ったので、火憐は大人しく間合いを取った。童磨もそれ以上追撃はしなかった。