第47章 上弦集結
裏通りに入り、薬屋へ足を運ぶと、何故かほっとした。本来の仕事をしている気分になれたのだ。
珈琲豆やカカオなど、珍しい物も手に入れられ、火憐は非常に満足した。因みに財布の二倍分は買い付けた。
そうしている内に日が暮れた。とてもじゃないが、夕食を摂る気にはなれず、そのまま鴉に導かれ、人通りの多い場所へ足を進めた。
肌が焼けつく様な気配と、微かに聞こえる琵琶の音。
(ここか)
火憐は、一見何の変哲も無い壁の前で足を止めた。
「私は一人で行くから、お前は戻りなさい」
鴉を空へ放つと、火憐は壁に手を押し付けた。まるで、何も無いかの様に、手が突き抜けた。彼女は深呼吸し、一気に壁を潜り抜けた。
火憐が最初に目にした物は⋯⋯
「こんばんは、童磨さん。どうして貴方の頭が半分吹き飛んでいるんでしょう?」
「人間?!」
壺の中から鬼が現れ悲鳴を上げた。火憐は、鬼舞辻の根城の中にいた。周囲には上弦の十二鬼月が集められている。
「お前は、あの時の!」
猗窩座が驚いた様子で振り返った。童磨はあっという間に頭部を修復すると、見せかけだけの笑顔を浮かべた。
「やあ! 君もとうとう仲間入りかな?」
「違います。呼ばれたので、取り敢えず来ただけです。気持ち悪いので笑い掛けないでいただけますか?」
火憐は冷ややかに答え、周囲の面々の力量を計った。
(壺と天狗はどうにかなるか? 猗窩座はギリギリ⋯⋯)
琵琶の音が鳴り響き、奏者の女が、鬼舞辻の到着を告げた。此処はどうやら空間が歪んでいる様で、鬼舞辻は天井からぶら下がる様に立ち、薬の調合を行っていた。
「妓夫太郎が死んだ。上弦の月が欠けた。其処にいる柱が葬った。状況を聞かせろ」
「妓夫太郎の敗因は大きく二つ。最初から自身が戦わなかったこと。私が戦闘に参加したこと」
火憐は、明瞭に答えた。鬼舞辻は顔を顰めた。
「その程度は把握している。何のためにお前を呼んだと思っている?」