• テキストサイズ

【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第7章 要求


「と⋯⋯冨岡さん⋯⋯」

 胡蝶は、初めて心から冨岡に同情した。炭次郎は物理的に石頭、宇那手は精神的に石頭。両者共に頑固で融通の利かない面がある。

「ともかく、街中でそういった行動は控えてください。それから、宇那手さん。少し考えたのですが、お館様の気持ちをもう少し汲んで差し上げてください。柱も──」

「柱も人間です。同期の顔は覚えているはず。足手纏いと分かっても、戦いで庇おうとする。それが敗北を招くことになる⋯⋯ですね?」

「そこまで分かっていたのですね。⋯⋯冨岡さん、この際引退してはどうでしょうか?」

 悪びれもせず提案した胡蝶を、冨岡は冷たく睨んだ。

「冗談です。可愛い宇那手さんに重責を押し付けて引退は出来ませんよね?」

 全く怯まない胡蝶も、中々強い精神の持ち主だ。彼女は宇那手に向き直り、袖から薬瓶を取り出した。

「さっきのお話を聞いていました。藤の毒です。服用はしないでくださいね。皮膚に触れたり、香りを嗅ぐ程度でしたら、人体に害はありません。椿油と混ぜてありますので、木には良く染み込みます。金属製の簪に使用する際は、一日に一回拭き取って、塗り直してください。毒の性質が金属と反応して変化しますので」

「お力添え、感謝します」

 宇那手がペコリと頭を下げると、胡蝶は冨岡に詰め寄った。

「一番高価で素敵な簪を買うんですよ、冨岡さん。宇那手さんには、そこら辺の木の枝なんか似合いませんからね」

 冨岡は、一言も返さず、プイと顔を背けて、歩き出した。

「宇那手さん、また何か困ったことがあれば、頼ってください。それから、冨岡さんの気持ちに気付いたら、感想を聞かせていただきたいです」

「⋯⋯はい」

 宇那手は、困惑気味に答えて、師範の後を追い掛けた。

 胡蝶は、束の間の安寧に身を委ね、二人の将来に想いを馳せた。
/ 766ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp