第7章 要求
「火憐」
「はい!」
突然両肩に手を置かれ、名前を呼ばれたことに、宇那手は驚いて飛び上がった。
「私の考えに、おかしな点がありましたか?! 直します!!」
「いや、違う」
冨岡は、突然宇那手を抱き寄せた。
「これからお前には、俺が個人的に俸給を払う。屋敷に手を加えたければ、全て好きにしろ。任せる。そして、死ぬな」
「⋯⋯きゅ⋯⋯急にどうしたのでしょうか?」
「お前は柱になれる。今の実力でも十分だ」
「嫌⋯⋯です。そのためには、師範が──」
「幸いお前は炎の呼吸も使いこなせる。応用も利くだろう。炎柱の席が開けば──」
「随分面白いお話をしていますね〜」
こっそり後をつけていた胡蝶が、ニッコリ笑っていた。
「冨岡さん、言葉には気を付けてくださいね。煉獄さんの死を願っている様に聞こえますよ」
「そのつもりは無い。そう言わなければ──」
「分かっています」
胡蝶は静かに頷いた。
「この一日で、少しは冨岡さんのことも解るようになりました。でも、他の柱はそうじゃありませんよ? 柱同士の殺し合いは不毛です。それから」
彼女は瞬く間に冨岡と宇那手の間に滑り込んだ。
「人の屋敷で抱き合うのはご遠慮ください。そもそも宇那手さんの同意はありませんでしたよね? 女の子にいきなり抱き付いたりしたら、今の時代、警察を呼ばれますよ」
「私は構いませんが」
宇那手の冷めた返答に、胡蝶も冨岡も凍り付いた。
「他の男ならともかく、師範には剣術を学ぶ際、何度も背後から抱き付かれましたし、押し倒された事もあります。慣れていますので。取り分け悪感情を抱いてはいません」