第46章 弟子
中庭へ出ると、火憐は、あっという間に弟子達に囲まれてしまった。
「火憐さん!! 上弦の十二鬼月を倒したんですね!!」
村田は膝を着いて深々と頭を下げた。他の隊士達も、柱に対する礼節を弁えていた。
「皆さん、顔を上げてください」
火憐は、声を掛けて全員を立ち上がらせた。
「お疲れ様でした。鱗滝様の試練を無事こなせた様で、何よりです。話は聞いているかと思いますが、全員、全集中常中を身に付けるまで、屋敷の外へは出られません。私は皆様を丙以上の精鋭にする事を目的としています。まずは特訓の成果を──」
「火憐様!!」
隠が死にそうな顔で突撃して来た。
「どうしました?!」
「お、お、お、お客様です!! 鋼鐵塚さんがぁぁぁぁ!!!」
「お連れしてください」
火憐がそう伝えると、鋼鐵塚の方から勝手にやって来た。彼は物凄い勢いで、土下座をした。
「刀が折れたのか?!」
頭を下げながら、物凄い口調で詰問した。火憐は正直に頷いた。
「申し訳ございません。無理難題を突き付けた、私の責任です。敵の攻撃を受ける時に、ほんの少し刀身がブレてしまい、折ってしまいました」
「攻撃を、一度受けただけで刀が折れたのか?! 俺の刀が!! 本当に、本当に、すまなかった!!」
「え?」
「あの刀は、鉄地河原鉄珍にも酷評された出来で、本来渡すべき物では無かった!! 俺が悪かった!! この通りだ!!」
「頭を上げてください! あの刀は非常に優秀でした。不本意でしょうが、二本渡していただいたお陰で、身体の平衡感覚も、これまで通り保てたのです。こちらこそ、折角いただいた物を折ってしまい、申し訳ございません!!」
「やっぱりそうだよなぁ⋯⋯。俺の刀は凄いよなぁ⋯⋯」
「え?」
「あのクソガキ!! 今度は刀を刃こぼれだと?! もう許さん!! 二度と打つものか!! 殺してやる!!!」