第45章 命の灯火
火憐の苦渋の言葉を聞き、輝利哉は声を上げて泣き出してしまった。
「申し訳ございません! こんな⋯⋯子供の様に泣きじゃくって⋯⋯」
「輝利哉様は子供です」
「私がこんなに情けないなんて⋯⋯っ⋯⋯お父上が知ったら⋯⋯!」
「誰も貴方を責める事は出来ません。貴方は何も悪く無いのですから」
「宇那手なら、お父上を救う事が出来るのではありませんか?!」
「どうすることも出来ません。手を尽くしました。本当に⋯⋯これ以上どうすることも⋯⋯。申し訳ございません」
火憐が顔を上げると、廊下の角にあまねが立っていた。火憐は首を横に振り、輝利哉の肩に手を置くと、膝を着いて目線を合わせた。
「私は、後七年、貴方のお側にお仕え出来ます。その間に泣き虫は卒業してくださいね? 大丈夫です。貴方なら上手くやれます。寂しさも、苦しさも、乗り越えられます。隊士達は一人で堪えましたが、貴方には私や柱がいます。絶対に大丈夫」
「私一人が、のうのうと生きていても良いのでしょうか?」
「良いんですよ。貴方は多くの人間に、生きる事を望まれているのですから。恥じる事はありません。胸を張って生きてください」
「⋯⋯頑張ります」
輝利哉はもう一度だけ腕に力を込めると、火憐から離れた。
「ありがとうございます、宇那手。貴女は母上の様です。温かくて、優しくて⋯⋯太陽の様な人です」
「いいえ」
火憐は袖からハンカチを出して、輝利哉の涙を拭った。
「私は月です。産屋敷家の皆様に照らされて、光を放てるのです」
「本当に、ありがとう」
輝利哉は最後ににこりと笑い、火憐の横を通り過ぎ、父親の元へ向かった。