第45章 命の灯火
「お館様」
火憐が穏やかに声を掛けると、産屋敷は布団の中で微笑んだ。
「宇那手、来てくれてありがとう。そして、良く頑張ったね。君なら必ず討てると信じていたよ」
「お身体は如何ですか?」
「落ち着いている。君の薬のお陰だよ。宇那手、心から感謝している」
産屋敷は、弱々しく手を伸ばし、火憐の頬に触れた。
「君は、柱を繋ぐ糸だ。君を通して柱たちが繋がっている。連携を取ることで、柱はこれまでよりも、ずっと、鬼にとって脅威となり得るだろう。⋯⋯しのぶから、話を聞いたよ。君は、私の呪いについても、どうにかしようと奔走してくれている様だね?」
「はい。⋯⋯あの、お館様。お話をするのは、苦しくありませんか?」
「今日は調子が良いんだ。⋯⋯呪いの事なら、私もある程度対策を練っている。そのために生き長らえる必要があるんだ」
「命を代償にするおつもりですか」
火憐は、ほぼ確信を持って口にした。彼女も色々と方法を考えたが、科学的に対処できない事象に対して、他に案が浮かばなかったのだ。
「君は、何でも知っているんだね」
産屋敷は、苦笑した。
「そう。鬼舞辻は、私の命を狙っている。私は、私を餌に奴を誘き寄せ、一矢報いようと考えている。勿論それで殺す事は出来ないだろう。それでも、多少私の罪が許され、輝利哉に呪いの影響が出るのを遅れさせる事が出来れば⋯⋯」
「では、輝利哉様に呪いの影響が出る前に鬼舞辻を殺す必要がありますね。出来るだけ早く。そう考えると、決戦は──」
「冬、だね。夜が長い季節だ」
「ご心配無く。なんとかします。絶対に鬼舞辻を殺します」
火憐が即答すると、産屋敷は手を下ろし、深く息を吐いた。
「君がそう言うと、いとも容易く叶いそうな気がしてくる。私は胸のつかえが取れて、安心出来るよ。宇那手は必ず、言葉にした事を実現させる」