第44章 懲罰
「うるさい」
冨岡は火憐をベッドに押し倒し、左腕の傷に舌を這わせた。
「痛いっ!!」
火憐は呻き声を上げた。冨岡は唇を塞ぎ、再度挿入した。乱暴に腰を打ち付けると、彼女はすぐに身体を逸らせた。
「宇那手、泣きたくなったら、二人きりになるまで堪えろ。二度とあの様な醜態を晒すな! お前は柱だ! 女に戻るのは、俺の前だけにしろ!」
「うっ⋯⋯あぁ⋯⋯っ」
「返事は?!」
「は⋯⋯はい! ごめんなさい!! もう⋯⋯許して!!」
「駄目だ」
冨岡は動きを止め、火憐の瞳を覗き込んだ。
「何故感情に蓋をしている?」
「蓋なんか──」
「一年共に過ごした。お前はもっと複雑な感情を持っているはずだ。何を隠している? 言ってみろ」
「⋯⋯誰かに命令されたわけじゃないです。私が選んだ道。でも⋯⋯」
火憐は冨岡の襟首を掴んだ。
「私は他の柱と対等ですか?! お館様の胸の内を聞き、鬼舞辻と接触し、誰よりも危険を冒しているのに、同じ様に振る舞えと言うのですか?! 柱であるという理由だけで!! こんなことなら、甲のままで良かった!! こんなに心が傷つくのなら、貴方と出会わなければ──」
彼女は慌てて閉口した。本当に言いたかったのは、もっと別の言葉だ。
「⋯⋯宇那手」
冨岡は、掠れた声で囁いた。火憐の頬に滴が落ちた。なんと、冨岡が無表情のまま泣いていたのだ。
「ち⋯⋯違うんです! 私は⋯⋯言葉を間違えて──」
「宇那手」
冨岡は、火憐をきつく抱きしめた。
「解放してやれず、すまない。お前の本心を聞いても⋯⋯俺はもう、お前を手放せない。お前の責務を肩代わりは出来ない。殺して楽にしてやることも出来ない。弱いのは俺の方だ! 逃げても構わん。何処か遠くへ逃れろ。戦いから身を引け。俺は⋯⋯一人でも平気だ」