第44章 懲罰
冨岡がベッドに下ろした瞬間、火憐は目を開けた。胡蝶も仰天していた。
「火憐さん?! お薬、効きませんでしたか?!」
「いえ。ちゃんと眠りました。それに落ち着いています。先にお伺いしなけばいけない事があると思いまして」
寝ている間に、どうやって思考したんだ、と全員がツッコミたくなった。何故か着いて来た不死川も、壁際で目を見開いた。
火憐は落ち着いた様子で口を開いた。
「お館様のご容態はいかがでしょうか?」
「貴女達が上弦の鬼を倒したと報告を受けた時、血を吐いて倒れた様です。その後は安静にされている様ですが⋯⋯」
「困りました」
火憐は起き上がり、再び胡蝶に紙と筆記具を要求した。
「皆様を信頼し、頼っても良いでしょうか?」
「勿論です」
胡蝶はバインダーと万年筆、紙を手渡した。
「産屋敷様が代々短命である理由が、鬼舞辻を産み出した家系であるから、という理由なら、鬼舞辻が罪を犯すほど寿命を削られるのだと思います」
火憐は、素早く調合を書き記しながら喋った。
「恐らく、上弦の鬼が人間を負傷させ、鬼舞辻が私の血を飲んだせいです。お館様は、なんらかの計画のために、後半年程度生きながらえる事を望んでいます。最後は、最悪生きているだけでも良い、と。鬼舞辻とお館様の性質を遠ざけなければなりません。無害化した彼岸花は抜きます。代わりに蓮の実と、葛を追加します。胡蝶様、確認をしてください」
彼女は走り書きを胡蝶に押し付けた。彼女は一通り目を通し、頷いた。
「問題無いかと思います。すぐに私が煎じます。ですが、薬よりも寧ろ、貴女の存在が必要かと思います。疲れているでしょうが、顔を出して差し上げてください。今日明日にとは言えませんが⋯⋯」