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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第43章 再来


「とにかく中で手当てを受けてください。冨岡さんも来ているんです」

 胡蝶は、無理矢理火憐の手を引っ張って建物の中に招き入れた。双子の少女達をアオイに託すと、彼女は真っ直ぐ診察室へ向かった。

 部屋の中には冨岡が佇んでいた。

「お前は──」

「説教は後でしてください。まずは治療です」

 胡蝶は冨岡を遮り火憐の左腕を見た。アルコールを含んだ綿で血を拭うと、白い肌に残った傷が鮮明に浮かび上がり、全員が顔を顰めた。

「何故童磨の元へ行ったのですか?」

 胡蝶は事務的な口調で訊ねた。

「吉原の鬼が、私を助けてくれたのです。私の正体がばれる前に。夜、廊下で男に絡まれ、簪で目を突いて逃れようとしたところ、直前で花魁に扮した堕姫が私を助けてくれた⋯⋯。純粋な悲しみの匂いがしたんです。私は彼女の仇を取りたかった。そして、兄鬼の唯一の心残りが、妹、堕姫の存在であると分かりました。首を落とし、消滅する間際に、妹の仇を討ってやるから、誰に鬼にされたのかと問い詰めた所、童磨である、と。童磨に聞いた所、堕姫は生前、遊女として働いており、乱暴をしようとした侍の目を簪で突いたせいで、腹いせに生きたまま火に焼かれた、と。人間は、誰も兄妹を助けはしなかったのです。童磨だけが、死にかけた妹を助けようとした。だから⋯⋯あの兄妹は⋯⋯人間が鬼にした様な物です」

 火憐は一気に喋り、ぐったりと脱力した。胡蝶は左腕を丸ごと包帯で巻き、止血した。

「貴女は何故、鬼舞辻と接触したのですか?」

「鬼舞辻の方が私を訊ねて来たのです。血を飲んだら、大人しく帰って行きましたし、今晩童磨と話して分かりましたが、私の扱いに変化は無い様です。上弦の鬼は、私を殺す事ができません。胡蝶様、筆を貸してください」

「ええ? 構いませんよ」

 胡蝶は、万年筆と白紙を手渡した。
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