第43章 再来
「おい、宇那手!!」
なんと、中から不死川が現れ火憐に掴み掛かった。
「テメェ独りでなにしてやがる!! 何のために俺が偵察に行った?! みすみす喰われに行く──」
「落ち着いてください! 私は喰われないと確信していたので、行ったのです」
火憐が手を振ると、不死川は目を見開いて彼女の手首を掴み、左腕の袖をまくった。
「おい、なんだよコレは⋯⋯。何処の化け物にやられたァ?! 人の心配をしておいて、このザマは何だァ?!」
「痛いっ!!」
「不死川さん、離して!」
胡蝶が割り込もうとしたが、不死川は手を離さず、火憐の目を覗き込んだ。どうやら答えるまで逃す気は無いらしい。
「っ⋯⋯此処は、鬼舞辻に血を飲ませた時⋯⋯此処は、血鬼術が掠った時⋯⋯此処には、解毒剤を含んだ簪を刺して、此処は童磨に血を飲ませるために切りました」
「馬鹿かテメェ!!」
不死川は思い切り火憐の頬を叩いた。彼女は避けようともしなかったせいで、その場に倒れ込んでしまった。
「冨岡が甘やかした結果がこれだァ! キツイ躾が必要らしい。鬼より自分で付けた傷が多いなんて──」
「貴方に人の事が言えますか?!」
火憐は立ち上がり、逆に不死川へ掴み掛かった。
「傷だらけの貴方を見て、理由を知った時、私がどんな気持ちになったかご理解いただけましたか?!」
「俺は男だ! お前は女だろうがァ!! しかも鬼舞辻に血を飲ませただと?!」
「私が稀血であると、童磨が鬼舞辻に伝えた様なのです。無臭で鬼を引き寄せる事はありませんが、飲めば昔の記憶が鮮明に蘇り、感情が揺さぶられ、心の奥底にある願望が叶った幻覚を見せる。鬼舞辻ですら、動揺していました。私の血を飲む事で、過去の記憶を辿り、日光を克服する算段なのです。だから、私の血が必要な内は、私を殺さぬ様、他の鬼共に指示しました」