第43章 再来
童磨の言葉に、火憐は悪寒が奔り無理矢理自分の身体から引き剥がした。
「無惨様が私の血を調べてくださいました。貴方は稀血と報告した様ですが、正確には過去の記憶や感情を蘇らせ、心の奥底にある願望が叶ったと錯覚させる作用があるらしいです。貴方は、私の血を飲む事で、感情があると錯覚しただけです」
「じゃあ、今のこの気持ちをどう説明したら良い? 僕はね、君の声を聞いた瞬間から、震えが止まらないんだ。君を帰したくないと思っているんだよ」
「っ!! あれだけのことをしておいて、良くそんな事を言えますね!!」
「仕方ないじゃないか。初めてだったよ。こんなにも人が美しく、心を揺さぶる存在だったなんて⋯⋯。君に恋をしたのかなあ?」
「帰ります」
踵を返した火憐の腕を、童磨は掴んだ。
「血を分けてくれないかなあ? ただで帰してあげるんだ。見逃してやるんだよ? 何かご褒美があっても良いじゃないか」
「クソ野郎」
火憐は顔に似合わぬ暴言を吐き、日輪刀を抜いて腕を斬りつけた。
「飲めば良いわ」
「ありがとう!」
「言い忘れていました。血を飲み続ければ、貴方は何れ、ご自身の本当の感情と、血による幻想の区別が付かなくなり、発狂するでしょう」
「それでも構わないよ。⋯⋯ああ、そうだ。君の代わりに何人かの女性に手を貸して貰ったけれど、皆数回でばててしまったよ。嫉妬と言うのかな? 僕を殺そうとした子もいたから、止むを得ず食ったけれど、君が相手をしてくれれば──」
「馬鹿なの?! 一回で良いのよ!! 貴方が悪い!! 手を離して!!」
火憐は乱暴に童磨を振り払った。