第42章 上弦の陸
「ごめん! ちょっと任せた!!」
火憐は、後輩達に叫ぶと、屋根の上で様子を伺っていた雛鶴の元へ向かい、栓をした試験管を渡した。
「これを使って!! かなり強力な毒!! 人間には効かない!!」
「ありがとう!!」
返礼を聞く前に、火憐は、妓夫太郎の戦闘に割り込んだ。
「竈門君!!」
彼女は攻勢に出ようとした彼に飛び掛かり、咄嗟に水炎の呼吸、拾弐ノ型で、血鎌から守った。しかし、宇髄の方は妓夫太郎に近すぎて守り切れなかった。妓夫太郎は、卑劣にも雛鶴を人質に取ろうと動いた。
「竈門君、動ける?! 君は警戒されていない。一撃で良いから!! 雛鶴さんを!!」
「はい!!」
秒以下の速度で妓夫太郎に捕まった雛鶴の為に、炭次郎は、水の呼吸とヒノカミ神楽を合わせた、新しい技を放った。
「よくやりました!」
次の一撃は、火憐が受け止めた。しかし、完全に力の方向を把握出来なかったせいで刀が折れた。
すかさず、彼女は予備の刀を抜いた。しかし、先ほどまでとは体のバランスが崩れた。体勢を立て直している内に、宇髄と炭次郎が同時に妓夫太郎へ斬りかかり、そして⋯⋯
「宇髄さん!!」
状況を瞬時に把握出来ていたのは、火憐だけだった。善逸、猪之助、炭次郎達は、希望的観測を元に、堕姫の首を斬る為に奔った。しかし、宇髄は戦闘不能状態に陥っており、妓夫太郎が三人組を追った。
堕姫の首をなんとか跳ねるに至ったが、すぐに妓夫太郎が追撃した。
(あの子達、何で見えないのよ!!)
火憐は苛立ちを露わに、猪之助と妓夫太郎の間に割って入った。
「水炎の呼吸、壱ノ型、水烈斬!!」
彼女のお陰で、猪之助は致命傷を避けられた。しかし、足に怪我を負い、肉が抉れて動きが取れなくなった。