第42章 上弦の陸
「堕姫さん。私は貴女の優しさも信じています。殺すなら、痛みも感じない方法で殺したい。首を差し出してください」
「ふざけるな!!」
「仲良くするのは、無理ですね」
火憐は、呼吸を切り替えた。
「水炎の呼吸、拾弐ノ型、流炎舞、反転」
堕姫の帯は燃え上がり、視界が遮られた。
「善逸君、猪之助君、呼吸を整えて。連携が取れなければ倒せません。貴方方を守り、経験を積ませるのも私の役割です。まあ、いざとなったら私が首を落としますから。ちょっと、休憩がてら見ていてください」
火憐は構えを変えた。
(炎の呼吸、奥義、煉獄)
一瞬の内に、堕姫の首が落ちた。
「どうやら、貴女は炎と相性が良い様ですね」
「嘘よ、嘘よ、嘘よ!! これまでだって柱に負けた事なんて無いのに!!!!」
「それは、お兄さんを含めて、の話ですか? 貴女の攻撃は確かに威力は高いです。でも、下弦の累よりも遥かに単純で回避がたやすい。まだ本気を出していないのなら、そろそろお願いします。あっちの柱は私よりも年長で、経験豊富ですから、これではすぐに死にますよ?」
「黙れ!!」
堕姫の帯が火憐を包む様に襲い掛かった。
「遅い」
(水炎の呼吸、壱ノ型、水烈斬)
彼女は容易に打ち払い、後輩たちの側まで下がった。
「⋯⋯どうやら、竈門君が限界の様です。此処は私に任せて助けに行って──っ!!」
火憐は建物の倒壊を察知して、二人の後輩を放り投げた。その一瞬の隙を突かれ、血の刃が肌を掠った。
(まずい!)
宇髄達の方が押されている。火憐は、即座に赤い石の簪を腕に突き刺した。そちらには、大抵の毒を分解出来る薬を仕込んでいた。まさか形見を使い捨てにするわけにはいかない。