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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第42章 上弦の陸


 翌朝、火憐は早くに叩き起こされ、琴、三味線、歌、舞踊の全てを披露させられた。どれも太鼓新造に絶賛された。

 善逸もだ。彼は耳が良いらしく、一度聴いた曲は正確に弾く事が出来た。

 火憐は、楼主の姿を見付けて声を掛けた。

「あの、すみません。奥様の姿が見当たらないのですが、何かあったのでしょうか?」

「⋯⋯事故で、二階から転落して⋯⋯昨日」

「まあ! なんてことでしょう」

 火憐は、恐らく堕姫の仕業だろうと看破した。善逸は遠くで震えていた。

「お見舞い申し上げます」

「ああ⋯⋯。ありがとう」

 楼主は、冷や汗をかきながらその場を去った。感情を隠せていない。あれでは、他の遊女に不安が伝播する。

 ただでさえ、この店では、足抜け、自殺、病死が多いと聞いた。

 そして、夜には善逸が騒ぎを起こした。蕨姫花魁の部屋で泣きじゃくっていた禿に声を掛け、部屋の片付けが済んでいない事に激昂した蕨姫の暴行から庇ったのだ。

 彼は手当てを受けていたが、いつの間にか姿を消した。火憐は、徹底的に無関心を装った。

 深夜、彼女は、藤の毒と椿油に漬け込んだ簪で髪を纏めて、天井に銅貨を投げた。ゴトンと音が響き、刀が用意された事が分かった。

 火憐はひたすら息を潜めていた。外で騒ぎが起こっている事は分かったが、タイミングを見誤れば、鬼舞辻に殺されかねない。

 その内、建物の一部が倒壊する等、騒ぎが大きくなった。宇髄の嫁たちが遠方から戦闘の支援を行っているのも分かった。

 堕姫が店の中にいないと分かったため、火憐は、手早く隊服に着替えて、刀を屋根裏から取り出し、部屋を出た。

 遊女たちは、皆怯え、一箇所に集まっていた。

「大丈夫ですか」

 火憐は、震える女達に歩み寄り、腕を引っ張り上げた。

「此処は危険です。今なら、建物の損傷も少なく、外へ出られます。全員遠くへ避難してください」
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