第41章 遊郭潜入
「結局、アンタはどっちの味方なの? 鬼? 人間?」
「私は人間と、鬼舞辻様の味方です。ですが、鬼を嫌悪しているわけではありません。お優しい貴女の事も。何もされなければ、何もしないつもりです。貴女が、鬼舞辻様の意に反する行動を取らない限り」
宇那手は、狡猾で、雲の様に掴み所の無い言葉を返した。堕姫は、煙に巻かれている様な苛立ちを覚えたが、鬼舞辻の手前手出しが出来なかった。何より彼女の美しさは本物で、無残に身体を切り刻み、殺すのは惜しかった。
「アンタと一緒に売られたあいつ! あいつも鬼殺隊でしょう?!」
「はい、そうです」
「はい、って! 私が今から始末しに行っても良いって事?!」
「やめておいた方が良いです。言いましたよね? 柱はもう一人いるんですよ。貴女の首が二つある事も、既に知っています。居場所を知られて、どうするつもりですか? 私は鬼舞辻様と取引をしていますので、この方の言う事は聞きますが、貴女の命令は受けません」
宇那手は、笑顔でキッパリと言い、二人の客人を交互に見た。
「そろそろ眠りたいのですが、お二人とも、朝まで此処にいますか? 陽当たり良好ですので、お勧め出来ませんよ」
(なんなのよ、この女!!)
堕姫は完全に気圧されて言葉を失った。宇那手は、自分を鬼にした男と同じ様に、心を読むことが出来なかった。擬態の精度が、鬼舞辻と同程度に高いのだ。
「ならば、私が買おうか」
鬼舞辻は、自身の発した言葉に驚いた。そしてようやく、宇那手の血の真の効果に気付いた。記憶と同時に、心の奥深くにある願望も引き摺り出されるのだ。
心の無い童磨が、何故一晩も無益な行為に費やしたのか得心が行った。彼はその実心を欲しており、宇那手の血を飲む事で、何かを感じたのだ。
「堕姫、私はこの娘に話がある。上手くやる様に。期待している」