第41章 遊郭潜入
「そんなに価値がありましたか──」
「無惨様!!」
鬼の女が部屋に飛び込んで来た。蕨姫の真の姿だろう。彼女は宇那手と、鬼舞辻の姿を見て、困惑した表情を浮かべた。
「無惨様、その人間の女は──」
「この娘は、人間の医者でありながら、私の身体を診てくれる。そして、柱だ」
「柱?!」
「だが、殺す必要は無い。とても役に立つ娘だからな。何より、特殊な血を持っている」
鬼舞辻は、宇那手の頭に手を置いた。
「勿論、私が鬼である事も承知の上で、手を貸してくれる。喰うなら、私が喰おう。だから手を出すな」
「はい。承知致しました」
堕姫は平伏した。宇那手は、蕨姫に目を向けた。
「先程は、助けてくださって、ありがとうございます。私は貴女の事もお助けするつもりです。その為に此処へ来ました。口は堅いのでご安心くださいね」
彼女は袖から採血用のキットを取り出し、自分の腕に突き刺した。瓶が満たんになってから、刃物の部分を取り除き、鬼舞辻に差し出した。
「どうぞ。お調べください。藤と水仙、彼岸花の毒が混ざっていますので、下級の鬼に与える際は、分解してからの方が良いでしょう。⋯⋯こちらを」
宇那手は、更に綴じ本の頁を破って差し出した。
「解毒剤の調合表です。裏もご覧ください。彼岸花の解毒剤について記しました」
彼女は、明らかに手に負えない二匹の鬼と同じ部屋にいても、恐怖心を露わにしなかった。寧ろ、鬼舞辻に対して信頼を示していた。
「柱って、あんた一人だけ? 違うでしょう? 女を送り込んで来たヤツがいるはずよ」
堕姫は、試す様にふっかけた。宇那手は、相変わらず穏やかな笑みを浮かべたまま頷いた。
「他の隊士は、私と完全に別行動をしておりますので、何処にいるのか把握しておりません。柱が男性である事は想定していらっしゃるかと思いますが、腕力で言えば、かなり上位の者です。ですが、それよりも注意して頂きたいのは、日の呼吸を使用する剣士。まだ未熟者ですが、しぶとい子ですので」