第41章 遊郭潜入
宇那手は、宇髄が予定通りに、蝶屋敷で騒ぎを起こすのを見守っていた。
アオイは戦意喪失者で、なほはそもそも隊士では無い。柱という、絶対的な存在に命じられ、逆らう事も出来ずに、怖い思いをさせてしまった事を、申し訳無く思った。
しかし、どんな状況にも救いはあるもので、感情が希薄であり、自身の意思を一切示した事の無いカナヲが、宇髄を引き留めた。
其処へ案の定、炭次郎が乱入し、宇髄はなほを放り投げた。
(あー! アレは酷い!!)
宇那手も、流石に黙っていられず、割り込もうとしたが、先に、善逸と猪之助が割って入った。宇髄は、彼ら三人の同伴を許可し、アオイを手放した。
「アオイ様!」
宇那手は、蝶屋敷の娘たちに駆け寄り、順番に頭を撫でた。
「怖かったですね⋯⋯。カナヲ様」
彼女は、勇気を出して踏み出した、胡蝶の継子を抱き締めた。
「頑張りましたね。偉かった。ちゃんと家族を守って、立派です」
宇那手は、宇髄と炭次郎達に目を向けた。
「私も同行します」
「柱が二人いるんじゃ、俺らいらなくね?」
猪之助が余計な一言を口にしたせいで、宇髄にぶん殴られた。
「うるせえ! 着いて来ると決めたなら、大人しく着いてきやがれ!!」
その後も宇髄は、自身を祭りの神と称し、三人組はてんやわんやの大騒ぎだった。とてもじゃないが、統制の取れた戦いは見込めない。
「そういえば、宇那手さん、雰囲気が大分違いますね。なんというか⋯⋯優しい匂いがする」
「任務の為なら、どんな自分にも化けるわ。私の役割は、遊郭に売られる弱い女だから、⋯⋯竈門君って、呼んでも良い?」
「はい!」
「貴方達には期待しているの。私は煉獄様の跡を継いだ。意思も可能な限り継ぎたい。貴方達三人を継子にしたいと考えている。だから、失敗しないでね」
「勿論です!」
「それって、俺も含まれているんですか?!」
善逸が手を挙げた。宇那手は、出来る限り優しく笑い掛けた。
「ええ。貴方も、猪之助君も」
「幸せって言って良いのかな!! 俺、超幸せだよ!! だって宇那手さんは、美人だし!!」