第40章 前夜
「俺が悪かった」
冨岡は、改めて宇那手を抱き寄せ、そのまま横になった。
「今日は止めよう。戻って来てからだ。眠れ」
「このまま寝て、良いんですか?」
「良い。許す」
「⋯⋯」
宇那手は、ぎゅと冨岡の胸の辺りを掴んだ。冨岡は、一年前の事を思い出した。
継子にしてくれと、冨岡を追い回した、三日目の晩、宇那手はとうとう力尽きて、山中で倒れてしまった。
流石にそのまま放置は出来ないと、冨岡が近くと、彼女は隠し持っていた短刀を、自分の喉に突き付けて、言い放った。
──私を継子にするか、此処に捨てるか選んでください。
夜の山に捨て置けば、鬼に襲われる可能性は十分にあった。冨岡は仕方なく了承し、その場で共に一晩明かす事にした。あの時も、冨岡が腕に抱いた瞬間、宇那手は安心し切った表情で眠りについた。
そのくらいのことしか、してやれないのが、やるせなかった。