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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第6章 思惑


「すっかり良くなりました。師範のことも、ありがとうございます」

 診察室で、宇那手は頭を下げた。

「⋯⋯炭次郎さんたちは、賑やかですね」

「少し元気が良過ぎるので、アオイが手を焼いているのですよ」

 胡蝶が伝えると、宇那手は口元に手を当てて笑った。

「羨ましいです。私の同期は、皆死にましたから。師範が言っておりました。隊士の質が落ちていると。その理由は、最終選別の方法にあると考えています」

「どういうことでしょう?」

 胡蝶は、対等な人間として宇那手に向き直った。

「師範の代もそうですが、優秀な剣士が最終選別に参加していれば、生き残る剣士も多いのです。一人が全ての鬼を倒してしまえば、全員が合格となります。⋯⋯現在、柱は全て埋まっています。九代分、師範と同じ様な事例があったのであれば、柱の能力が高い分、隊士の質が落ちているのは、仕方の無い事だと言えます」

「⋯⋯なるほど。そこまで考えてみたことはありませんでした」

 胡蝶は、素直に称賛した。戦いの腕は兎も角、頭脳に関しては宇那手の方が冨岡を上回っている様に見えた。隊士になる以前の、両親への対応を鑑みてもそう思える。

「お館様が、那田蜘蛛山の戦いに、柱より先に一般の隊士を向かわせたのは、ふるいにかける意味もあったのでは無いでしょうか。犠牲を最小限に抑えるなら、最初から柱を送れば良かったのです」

 宇那手の言葉端には、ほんの少し怒りが込められていた。恐らく、彼女の同期も、同じ様な理由で命を落としたのだろう。

 胡蝶は手を伸ばし、宇那手の頭を撫でた。

「あまり思い詰めてはいけませんよ。この先、今以上に辛い戦いが待っているはずです。上弦の鬼は更に強い。元柱の、私の姉も戦い、命を落としました。無残な殺され方をしました。奴らは、人の苦痛を喜び、命を弄びます。⋯⋯こんな事を言っては、貴女を怒らせてしまうかもしれませんが、喰うことを目的とした、並の鬼に殺された方が、遥かに楽なのです。⋯⋯冨岡さんでも、単身で無惨に敵うとは──」
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