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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第6章 思惑


「絶対に殺させません!」

 宇那手は、立ち上がった。

「私が死なせない! 今後は師範に制止されようとも、戦いの場へ赴きます!! 他の柱を犠牲にしても、冨岡さんは守ります!! ⋯⋯私の中で、胡蝶様の優先順位は高いですが、冨岡さんのためなら、道具として扱います!!」

「⋯⋯」

 胡蝶は、笑みを引っ込め、視線を逸らした。

「貴女の強さが羨ましい⋯⋯」

 彼女が涙を零したのは、姉を失った日以来だ。

「私にも、それだけの覚悟があれば、姉さんを失わずに済んだかもしれません⋯⋯。鬼を許せないのは勿論です。でも、人の命にも、人それぞれ優先順位というものがある。姉は誰よりも大切な存在だったのに⋯⋯。私は貴女を責めませんよ。分かっています。貴女は、冨岡さんを大切に思っていますが、那田蜘蛛山の一件について、確かに怒っていました。優しい人です。優しい貴女が、そんな事を口にするのは、どれだけ辛い事か⋯⋯分かります」

「申し訳ございません⋯⋯」

 宇那手は深々と頭を下げた。胡蝶は首を横に振った。

「気にしないでください。貴女は良い剣士になります。冨岡さんは、誤解を受けやすい方ですから、貴女が理解してあげてくださいね」

「はい」

「それから、これを差し上げます」

 胡蝶は風呂敷を宇那手に手渡した。

「以前私が着ていた羽織です。貴女とは背格好が近いので、こちらの方が動きやすいかと思います」

「ありがとうございます」

 宇那手は、受け取った風呂敷の隙間から、薄桃色の美しい布地を見た。両親が生きていた頃は、そういった色の着物を良く着ていた。宇那手自身は寒色を好んでいたが、母なりに、女の子らしさを意識して選んでくれていたのだろう。
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