第38章 継承
「私の行動は無駄では無かったでしょうか? 今度こそ、正しい判断だったでしょうか? 柱の皆様の前で情報をお伝えしました。煉獄様の様に、死なせずに済むでしょうか? 私の得た情報で、宇髄様をお守り出来るでしょうか?」
「全て正しい。お前は一度も間違えた事がない」
「私は、宇髄様の奥様をお守り出来るでしょうか?」
「ああ。お前なら出来る」
それを聞いて、ようやく安心したのか、宇那手は甘露寺よりも激しく泣きじゃくった。
(コイツは、煉獄さんの件を引き摺ってたのか)
不死川は言葉を失った。宇那手は、柱の誰とも違う。優し過ぎて、戦えているのが不思議なくらいだった。自分の方が酷い目に遭っただろうに、殆ど交流の無かった宇髄の身を案じ、会ったこともない嫁の心配をしている。
鬼に情けを掛ける後輩も異端者と切り捨てず、意思を尊重した上で導いた。自分も傷付いているだろうに、炎の型を使用し、自分が継承者であると示し、三人組の心を救ったのだ。
不死川や、血や、灰の臭いとは程遠い、尊い存在だと思った。強気に見えて、幼く、泣き虫で、けれど自分を犠牲にしてまで、他人を救おうとする。
「ごめんな」
不死川は、素直な言葉を自然と口にしていた。
「俺らが、馬鹿で、弱いから、お前が苦しむ。柱は⋯⋯まだまだ弱過ぎるんだ。もう少し、時間をくれ。俺はまだ強くなれる。後輩を守れる程度には強くなる」
「ありがとうございます」
宇那手は、不死川や、宇髄にも目を向けた。
「私は、より皆様のことが好きになりました。皆優しくて、心の温かい人です。大好きです!」
唐突に不死川は理解した。宇那手は、好意を人に示し、愛を与えることの出来る人間なのだ。だから、人に好かれ、愛される。命を懸けて守ると決めた。