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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第38章 継承


「冨岡。男なら、守ると言い切れ。俺はお前を守る気は無い。自分で自分を守れ。それが、俺たちが宇那手を守る最低限の条件だ。それから、コイツをもっと褒めてやれよ。俺の見立てが間違ってなきゃ、コイツは甘露寺よりも泣き虫だ。⋯⋯まあ、そもそも人に興味が無いなら、無理な要求だろうが。出来ないなら、俺や不死川が代るぞ」

「お前らじゃ、代わりは務まらない」

 冨岡は、喧嘩腰とも捉えられる言葉を返した。普段の彼なら其処で立ち去っていただろう。しかし、今日は宇那手を抱き寄せ、厳しい表情を浮かべた。

「俺も理由が分からんが、こいつは再会した後、三日三晩不眠不休で俺を追い回し、継子にしろと騒いだ。鬼に追われている時よりも恐ろしかった。何故か俺に執着している」

 宇髄と不死川は、冨岡が小柄な少女に追いかけ回されて戸惑う姿を想像し、思わず笑ってしまいそうになった。

 冨岡は尚も続ける。

「こいつが繊細なのは分かっている。繊細過ぎて、胡蝶は抱えきれなかった。お前らもそうだろう。俺ですら、息が詰まる。俺でなければ、心を抱えきれない。人の感情が理解出来ない俺が、ちょうど良いんだろう」

「冨岡さん、私は何時も渇いています」

 宇那手は、刀を収めて、静かに口を開いた。

「守って欲しい。でも、誰より守りたい。もっと私の感情を理解して欲しい。一つ理解していただけると、次も、次も、と。けれど、それを言葉にするのも憚られて、何時も苦しい。今回は宇髄様の言葉に救われました。貴方にも言って貰いたかった。恨みたくなるのも、怒りたくなるのも分かります。でも、私、頑張ったんです。誰も出来ない仕事をこなして来た。貴方に⋯⋯良くやったと、柱として褒めて貰いたかった⋯⋯」

 無茶な願いだと、宇髄も不死川も思った。宇髄の様に、程よい距離にいるからこそ言えた言葉であって、長い時間を共に過ごした冨岡には難しい言葉だ。大切に思っているからこそ、手放しに称賛など出来なかったのだ。

「良くやった」

 冨岡は、そう言って宇那手の頭に手を置いた。冨岡だからこそ、言えたのだ。

「強靭な精神力でなければ、こなせぬ任務だった。お前は完璧にこなした。良くやった」

「⋯⋯本当に?」

「ああ」

 冨岡は、宇那手の身体を抱き寄せた。彼女は肩を震わせて冨岡にしがみついた。
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