第38章 継承
宇那手は、厳しい表情を後輩達に向けた。
「上弦の鬼や、下弦の壱と戦って分かったはず。心が人に近い鬼ほど弱いのです。貴方方は優しいから、弱みにつけ込むのは、辛いかもしれない。けれど、どんなに悲しい過去を持っていようとも、人を傷付ける鬼を許してはいけません。情けを掛けるのなら、殺した後にしなさい。それから」
彼女は、炭次郎達の伸び代を信じて、情報を伝える事にした。
「これまでの経験上、人を喰った鬼ほど知能が高く、人間に近い姿をしています。人間に近い姿の者は、鬼になりたてか、山程人を喰っているかのどちらか。三人とも、特殊な感覚をお持ちですので、分かるかと思います。油断しない様に。ただ⋯⋯上弦の弍については例外です」
宇那手は、辛い記憶を引き出した。
「上弦の弍には、心がなかった。喜怒哀楽を表情で表現はしていましたが、心が無いので感情を一切読み取れませんでした。鬼舞辻ですら感情を持っていたのに。胡蝶様の姉を殺し、私を⋯⋯いえ、この話は不要でした」
彼女は三人の隊士を順番に見詰めた。
「胡蝶様は上弦の弍を討つと決めています。カナヲさんが手助けするはず。同期として、貴方方も力になってあげてください。私は⋯⋯事情があり、あの鬼と戦えるか分からない。お願いします」
宇那手は深く頭を下げた。自分で討つと言えない弱さが悔しかった。
「あの鬼は、柱であり、女の私を確実に喰おうとします。出来る限り弄び、死をも凌駕する苦痛を与えてから。次にあの鬼に囚われたら、私はきっと正気を保ってはいられません。女性の隊士にはお願い出来ません。現状、十二鬼月に対処できる隊士は、柱とカナヲ様以外にいません。でも、貴方方は、もっと強くなれるはず。なると決めている。他の十二鬼月は、全て私が引き受けます。だから、どうか⋯⋯」